この記事では、きゅうりを8月に植える際の具体的な手順から、いつまで収穫が楽しめるのか、という疑問まで、網羅的に解説していきます。
- 8月にきゅうりを植える際の具体的な注意点
- 夏きゅうり栽培との決定的な違い
- 秋きゅうり栽培を成功させる育て方のコツ
- 収穫時期や発生しやすい病害虫の対策
きゅうり 8月に植える栽培の基本
- 秋きゅうりが育たないと言われる理由
- 夏きゅうり栽培との根本的な違い
- 秋栽培に適した品種の選び方
- 最適な種まき時期はいつなのか
- 苗の植え付け方法と注意点
秋きゅうりが育たないと言われる理由
8月に植える秋きゅうりが育たない、あるいは実がならないと言われる最大の理由は、きゅうりの生育に必要な「日照時間」と「温度」が、収穫期にかけて不足していくためです。
きゅうりは本来、十分な日光と高い気温を好む夏野菜です。
春から夏にかけて育てる一般的な栽培では、気温と日照時間がどんどん増えていく中で生育のピークを迎えます。
しかし、8月に苗を植え付ける秋栽培では、植物が最もエネルギーを必要とする開花・結実の時期(9月~10月)に、日照時間は短くなり、気温は徐々に低下していきます。
特にきゅうりの生育適温は17~28℃とされており、夜間の気温が17℃を下回る日が続くと、生長が著しく鈍化し、実が大きくならなかったり、奇形果が増えたりします。
このため、十分な対策をしない露地栽培では、「株は育ったのに、ほとんど実がならなかった」という結果に終わりやすいのです。
ハウス栽培との違い
ホームセンターなどで「秋きゅうり」として販売されている苗の多くは、本来、温度や光を管理できるハウスでの抑制栽培を前提としています。
一般家庭の露地栽培で同じように育てようとすると、この環境の違いが失敗の大きな原因となることを理解しておく必要があります。
「夏に絶好調だった場所だから大丈夫」と思っていても、秋の太陽の高さや日照時間は夏とは全く異なります。
特に午後から日陰になるような場所では、想像以上に生育が停滞することがありますよ。
夏きゅうり栽培との根本的な違い
夏きゅうり栽培と秋きゅうり栽培の根本的な違いは、「気候の変化」に対するアプローチです。
言い換えれば、片方は「上り坂」の環境で、もう片方は「下り坂」の環境で育てるという点にあります。
この違いを理解することが、秋きゅうり栽培を成功させるための第一歩となります。
以下の表で、両者の違いを具体的に比較してみましょう。
項目 | 夏きゅうり栽培(春植え) | 秋きゅうり栽培(夏植え) |
---|---|---|
植え付け時期 | 4月~5月 | 7月下旬~9月上旬 |
生育期の環境 | 気温・日照時間が上昇・増加していく | 気温・日照時間が下降・減少していく |
主な課題 | 梅雨時期の病気、真夏の暑さ対策 | 植え付け時の猛暑、生育後半の低温・日照不足、病害虫 |
栽培のゴール | 夏の間にできるだけ多く収穫する | 株の勢いを維持し、霜が降りるまで収穫を続ける |
このように、秋きゅうり栽培は「守りの栽培」とも言えます。
いかに株を疲れさせず、迫りくる低温から守り、限られた日照を最大限に活かすかが重要です。
そのため、夏きゅうりと同じ感覚で育てていると、肥料切れや病気であっという間に株が弱ってしまいます。
秋栽培に適した品種の選び方
秋栽培を成功させるためには、環境の変化に強い品種を選ぶことが非常に重要です。
特に、涼しくなる時期に発生しやすいうどんこ病やべと病への「耐病性」と、気温が下がってもつるが伸びやすい「低温伸長性」を兼ね備えた品種が適しています。
苗や種を選ぶ際には、パッケージの裏などに記載されている品種の特性をよく確認しましょう。
秋栽培におすすめの品種特性
- うどんこ病・べと病耐性:秋雨や朝晩の冷え込みで発生しやすい2大疾病に強いことが必須条件です。
- 低温伸長性・着果性:気温が下がっても生育が止まりにくく、実をつけやすい性質。
- 側枝(子づる)の発生が良い:親づるの生長が止まっても、子づるや孫づるから収穫が期待できます。
具体的には、「夏すずみ」「よしなり」「シャキット」といった、うどんこ病やべと病に強い定番品種は秋栽培にも向いています。
また、「霜知らず地這(しもいらずじばい)」のように、その名の通り霜が降りる頃まで収穫できることを特徴とした品種も存在します。
近年では「秋どりキュウリ」として専用の品種も販売されているため、探してみるのがおすすめです。
最適な種まき時期はいつなのか
秋きゅうりの栽培計画において、種まき時期は収穫量を左右する極めて重要な要素です。
結論から言うと、苗を育てる場合、種まきは6月下旬から7月中旬に行うのが一般的です。
8月に種を直接畑にまくのは、暖地を除いては収穫前に気温が下がりすぎるため、あまり推奨されません。
8月の種まきは遅すぎる可能性が高い
きゅうりの発芽適温は25~30℃と高いため、8月に種をまいても発芽はします。
しかし、そこから苗が育ち、実が収穫できる大きさになるまでには約40~50日かかります。
8月中旬に種をまいた場合、収穫が始まるのは9月下旬から10月となり、その頃には多くの地域で生育が鈍化する気温になってしまいます。
したがって、「8月に植える」というのは、種からではなく「苗」を植え付けると解釈するのが現実的です。
7月中に種まきをして育苗した苗を、8月上旬から中旬にかけて畑やプランターに定植するのが、秋きゅうり栽培の標準的なスケジュールとなります。
苗の植え付け方法と注意点
8月に秋きゅうりの苗を植え付ける際は、1年で最も過酷な「猛暑」と「乾燥」から、か弱い苗を守り抜くことが最大のミッションです。
この初期段階で苗がダメージを受けると、その後の生育に大きく影響します。
植え付け作業は、日中の炎天下を避け、気温が少し下がる夕方に行うのが最適です。もし日中に行う場合は、曇りの日を選びましょう。
植え付けの具体的な手順
- 植え穴の準備:ポット苗より一回り大きい穴を掘り、中にたっぷりと水を注ぎます。水が引くのを待ってから植え付け作業を始めます。
- 苗の取り出し:ポットを逆さにし、根鉢(根と土が固まった部分)を崩さないように優しく苗を取り出します。
- 植え付け:根鉢を穴に入れ、周囲から土を寄せます。深植えは避け、根鉢の上面と畑の土の高さが同じになるように調整します。
- 水やりと敷きわら:植え付け後、株元に再度たっぷりと水を与えます。そして、株元に敷きわらや刈草を敷き、土の乾燥と地温の上昇を防ぎます。これは泥はねによる病気予防にも非常に効果的です。
植え付け後の初期管理が重要
植え付け後1週間程度は、苗が新しい環境に根付く(活着する)ための重要な期間です。
この間は土が乾かないようにこまめに水やりをしましょう。
また、必要であれば寒冷紗などで一時的に日よけを作り、強い西日から苗を守ってあげるのも有効な手段です。
きゅうり 8月に植える育て方のコツ
- 水やりと追肥の管理ポイント
- 整枝・摘芯で収量を安定させる
- 注意すべき病害虫とその対策
- 曲がり果など奇形果の原因と対策
- 収穫はいつまで楽しめるのか
- きゅうり 8月に植える栽培の総まとめ
水やりと追肥の管理ポイント
秋きゅうりの栽培では、生育期間を通じて適切な水分と栄養を絶やさないことが、収穫量を維持するための鍵となります。
特に、生育後半の低温期には株が弱りやすいため、きめ細やかな管理が求められます。
水やりの基本
きゅうりは根を浅く張るため、乾燥に非常に弱い野菜です。
土の表面が乾いたら、早朝か夕方の涼しい時間帯に、株元へたっぷりと水を与えます。
特にプランター栽培の場合は土が乾きやすいため、夏場は朝夕2回の水やりが必要になることもあります。
葉水(はみず)の効果
晴れた日が続いて空気が乾燥しているときは、葉の裏表に霧吹きなどで水をかける「葉水」も効果的です。
これにより、乾燥を好むハダニの発生を抑制し、葉の健康を保つ助けになります。
追肥のタイミングと方法
きゅうりは「肥料食い」と言われるほど、多くの栄養を必要とします。
最初の実がなり始めた頃を1回目の追肥の目安とし、その後は2週間に1回程度のペースで追肥を続けます。
化成肥料(8-8-8など)を1株あたり軽く一握り(約30g)、畝の肩や株の周りにパラパラとまき、軽く土と混ぜ合わせます。
肥料が株の根元に直接触れると肥料やけを起こす可能性があるので注意しましょう。
生育の様子を見ながら、液肥を併用するのも効果的です。
秋きゅうり栽培では、株全体の風通しを良くし、限られた太陽光を効率的に葉に当てるために、適切な整枝(せいし)と摘芯(てきしん)が欠かせません。
これにより、病気の予防と収量の安定化を図ります。
下葉かきとわき芽かき
まず、株の健康を保つために、地面から5~6節目(約30cmの高さ)までのわき芽と雌花は、すべて小さいうちに摘み取ります。
これは、初期段階では株の生長、特に根を張ることにエネルギーを集中させるためです。
その後、子づる(わき芽から伸びたつる)が伸びてきたら、葉を1~2枚残してその先を摘芯します。
これにより、子づるの先に栄養が集中し、質の良い実がなりやすくなります。
また、収穫が進むにつれて黄色くなったり、病気になったりした下葉は、見つけ次第こまめに取り除き、風通しを確保しましょう。
「もったいない」と感じるかもしれませんが、初期のわき芽かきは、人間でいうところの基礎体力作りと同じです。
ここでしっかり株を育てておくことが、後半の粘り強い収穫につながるんですよ。
親づるの摘芯
親づる(主茎)は、支柱の高さ(おおむね1.8m~2m程度)まで伸びたら、先端を摘芯します。これにより、親づるの生長が止まり、その分の栄養が子づるや孫づる、そして果実の肥大へと回るようになります。
注意すべき病害虫とその対策
気温が下がり、雨が多くなる秋口は、きゅうりにとって病害虫のリスクが高まる季節です。
特に「うどんこ病」と「べと病」は、秋きゅうり栽培では避けて通れない病気と言っても過言ではありません。
早期発見と対策が重要です。
秋に多発する2大病気
- うどんこ病:葉の表面に白い粉をまぶしたようなカビが生える病気。乾燥気味で、日当たりや風通しが悪いと発生しやすいです。
- べと病:葉に淡黄色の斑点ができ、裏側にはすす状のカビが生えます。湿度が高い環境で、泥はねなどから感染が広がります。
これらの病気は、一度広がると薬剤を使っても抑えるのが難しくなります。
予防策として、適切な整枝で風通しを確保し、敷きわらなどで泥はねを防ぐことが基本です。
発病した葉を見つけたら、すぐに取り除いて畑の外で処分し、感染拡大を防ぎましょう。
害虫では、アブラムシやウリハムシに注意が必要です。
アブラムシはウイルス病を媒介することもあるため、見つけ次第、粘着テープで取り除いたり、薬剤を使用したりして対処します。
ウリハムシは葉や果実を食害するので、見つけ次第捕殺するのが確実です。
曲がり果など奇形果の原因と対策
きゅうりを育てていると、まっすぐな実だけでなく、曲がったり、先が細くなったりした「奇形果(きけいか)」ができてしまうことがあります。
これは、きゅうりの株が発している健康状態のサインであり、原因を突き止めて対処することで改善が可能です。
きゅうりは成分の90%以上が水分で構成されていると言われていますが、カリウムなどの栄養素も含まれています。
生育には、水分と栄養のバランスが非常に重要です。
奇形果から見る株の状態
- 曲がり果:最もよく見られる症状。主な原因は、栄養不足、水分不足、日照不足、または低温です。株全体が弱っているサインなので、追肥や水やり、摘葉を見直しましょう。
- 尻細り果:果実の先端が極端に細くなる症状。生育後半に多く、肥料切れや株の老化が原因であることが多いです。追肥を行い、なり疲れを防ぐために若採りを心がけます。
- 尻太り果:ヘタ側が細く、先端が膨らむ症状。水分や栄養のバランスが崩れ、特に窒素過多の時に見られることがあります。
奇形果を見つけたら、それは株からのSOSサインです。
そのままにしておくと株の負担になるだけなので、小さいうちに摘み取ってしまい、株の負担を軽くしてあげることが大切です。
その上で、追肥や水やり、日当たり改善などの対策を講じましょう。
収穫はいつまで楽しめるのか
秋きゅうりの収穫期間は、お住まいの地域やその年の気候によって大きく変わりますが、一般的には9月上旬から始まり、10月下旬~11月上旬の霜が降りる頃まで楽しむことができます。
収穫を長く続けるコツは、「若採り」を徹底することです。
きゅうりは収穫が遅れて大きくなりすぎると、株の体力を著しく消耗させてしまいます。
これを「なり疲れ」と呼び、次の実が育ちにくくなる原因となります。
こまめな収穫で株を長持ちさせる
長さ18~20cm程度を目安に、早め早めに収穫していきましょう。
特に、株がまだ小さい時期にできる最初の1~2本は、10cm程度のさらに小さいサイズで収穫すると、株の負担を減らし、その後の長期収穫につながります。
収穫の際は、ハサミを使ってヘタの部分を切り取ります。
朝の涼しい時間帯に収穫すると、みずみずしさが保たれていて特においしいです。
収穫が続く間は、肥料と水が切れないように、2週間に1度の追肥とこまめな水やりを忘れずに行いましょう。
きゅうり 8月に植える栽培の総まとめ
この記事では、きゅうりを8月に植える秋栽培のポイントについて解説しました。
最後に、成功のための要点をリストで振り返ります。
-
- 秋きゅうりの成否は温度と日照時間の確保が鍵
- 夏きゅうりとは異なり気温が下がる環境での栽培となる
- うどんこ病やべと病に強い耐病性の品種を選ぶ
- 低温でも生育しやすい品種が秋栽培には向いている
- 8月に植えるのは種ではなく苗が基本
- 種まきは7月上旬までに行い育苗する
- 植え付けは猛暑を避け夕方に行う
- 植え付け後は敷きわらで乾燥と地温上昇を防ぐ
- 最初の実は小さいうちに収穫して株の負担を減らす
- 水やりは土の表面が乾いたらたっぷりと行う
- 追肥は2週間に1回を目安に欠かさず実施する
- 下の方のわき芽や病気の葉は摘み取り風通しを良くする
- 親づるは支柱の高さで摘芯し栄養を実に回す
- 奇形果は株が弱っているサインなので早めに摘果する
- 収穫は霜が降りる10月下旬から11月頃まで可能
```